klis OBが司書課程科目の担当講師になった話

この記事はklis Adbent Calendar2019の23日目の記事です。遅刻してしまった…すいません。。。

という訳でお久しぶりです。Laboremus4869です。
「就職しました!これからはブログも頻繁に書ければ良いなと思ってます!」
という最後の記事から5年
頻繁とは…。
(そもそも最後の記事も1.5年ぶりくらいの更新だった訳ですが…)

今回は上記の企画を見かけたのでブログ再開のきっかけとしてみたく何かしら書いてみます。
まぁお暇な方はお付き合いください。

なお、以下の記事はLaboremus4869の個人的な意見・見解となっており、所属する(していた)いかなる組織とも無関係であることを予めご了承ください。

自己紹介

どんな人か

klis ACをきっかけにこのブログを訪れてくださった方もいると思いますのではじめに自己紹介をば。
これをいま書いている人はklisのOBです。klis08で入学してklisに4年、slisに2年在籍しました。大学卒業から8年くらい、大学院を修了してから6年くらい経っています。このカレンダーの14日目に激エモ記事を投稿してくれた某OGと同期です。

いま何をしている人か

さて、slisを出た私は運良く某大学図書館に職員として採用して頂き、現在はシステム系の部署で一介の大学図書館職員として働いています。記事の本旨とは全く関係ありませんが皆さんWindows7のサポートが間もなく終了します。対応はお早めに(血涙)
で、就職してから6年、平日は変わらず図書館職員として勤務を続けている訳ですが、2年程前から更に幸運なご縁があって、都内の某私大某学部の司書課程で非常勤講師としても勤務させて頂いています。担当講義は主にサービス系を4つ程。土曜日の1,2限を前後期で担当しています。Yes,週休1日生活。大学院生の頃に比べれば屁でもないぜ。

で、この記事ではその非常勤講師の経験について何かしら書こうと思っています。

講義の準備を始めて

さて、そうは言っても大学で15回しっかり講義を持つなんていうのは当然経験したことがなく、前任者や同じ講義を他大で担当している先輩や友人に一応資料を見せて頂いたりはしたものの中々準備は難航するわけです。
「講義を組み立てる時は担当講義の名前が付いた教科書を参考にすると良い」
という先輩諸姉諸兄からのアドバイスに基づいて色んな出版社の教科書*1とにらめっこしながら準備を進めるも中々捗らない。
教科書にはスライドの作り方とか載ってないし。
あとまずシラバスが書けない。

しかし落ち着いて欲しい。一応自分も司書資格を持っているはずだ。という事は同様の講義をklisの学生だった頃に受けているはずだ。つまりklisのシラバスや過去の講義資料が自分にとって大きな指標になるのでは…?

という事にふと思い当たりまして、いそいそと昔のシラバスや講義資料などを引っ張り出してきた訳です。
まずシラバスに自分が担当する講義の名前が一つも見つからない。これはまぁ司書課程科目を適宜「読み替え」ている訳で、そうおかしな話ではありません。講義の対応については大体シラバスの後ろの方に書いてあります。
(資格科目については色々ややこしいので詳しく知りたい人は調べてみましょう)
で、その対応表を見ながらかつて自分が受けた講義を特定して当時のノートやレジュメをマジマジと眺めてみます。

すごい!内容から順序から深度からひとつも教科書に沿ってない!!

いや嫌な予感はしてたんですよ。だって件の司書科目の教科書たち、klis在籍の頃に買ったり読んだりした覚えが殆ど無いもの…。
誤解の無いように言っておくと、少なくとも当時のklisのカリキュラムは大変よく出来たものだったと思っています。図書館職員をやる上で、社会人をやる上で、klisの講義から得たものは本当に本当に役立っています。klisのカリキュラムがどんな感じにイケてるかっていうのはこのカレンダーの22日目の記事を読んでください。某OBがこの記事の何倍も読み応えのある記事をアップしてくれています。

そういう訳で、「自分が受けてきた講義をひな形に自分が担当する講義を組み立てる」という一見まともそうな構想は木っ端微塵になりました。そこから七転八倒、ヒーヒー悲鳴をあげながらなんとかかんとか準備は出来ました。ここを細かく書くとすごく長い記事になるので割愛。

実際に講義を始めて

なんとか準備を終えるといよいよ講義スタートです。はじめこそ緊張しきりでしたが次第にそれどころではなくなります。なにせ毎週90分×2コマの講義をほとんど年中マラソンせねばならんのだ。息をついている暇はない。
講義をするのは楽しかったです。学生さんの質問やリアクションなどなど、こんなにリアルタイムに密度の大きいフィードバックがコンスタントに受け取れる機会はそうそうない。講義をするのは楽しいぞ、という話は来年のklis ACカレンダーにでも書こうか?(鬼が爆笑しそうな話ですが)

とは言いつつ、講義を進めながらもどこかしら引っかかっていたのは
「なぜklisの科目たちと標準的な(?)司書課程科目たちはこうも違うのか?」
ほぼ2年講義を持ってみた今、何となく分かったような気がしてきています。

我々は司書課程科目たちを受けたのではなく、図書館情報学の講義を受けたのだ。

文字列にすると大変単純な話で、klis自身が割とそこかしこで発信しているメッセージです。きっと優秀な人であれば在学中に実感を持つのでしょう。自分はそれよりも実感を得るのに少し時間がかかりました。
多くの大学で司書課程科目は"+α"です。それぞれの学部にそれぞれの学問がある。当たり前の話ですがそれを4年で一定のモノにするのはそれだけで結構大変です。司書資格を取得するならそれに加えて一定の科目たちを履修しなければなりません。必然、科目の主眼は「司書資格の質保証」に置かれる事が多い。
一方でklisはその「それぞれの学部のそれぞれの学問」が図書館情報学です。私達は「他の学問を一定程度修めて、さらに司書資格も持っている人」ではなく「図書館情報学を一定程度修めた人」にならなければならない。だからこそklisの講義たちは他大で展開される一般的な司書課程科目の講義に比べてハードコアである場合が多かったのではあるまいか、というお話です。

「司書になりたい!」を挫きまくるklis

まぁ結構色々なところで聞く話ですが、klisの「図書館」という名称に惹かれて入学・編入した新入生・編入生の多くは最初に時間割を見て面食らいます。
「図書館に関係する科目、少なくない…?」

わかる。

でもそれも上のお話を踏まえると何となく理由が分かってきます。「図書館情報学」は「司書になる人(目指す人)」のためだけの学問ではありません。
図らずもひとつ前の記事と同じようなことを書きますが、ものすごーく広く言うと、情報や知識という(よくわからない)モノを、どうやって今よりより良く扱ってやるのか、世の中を回してやるのか、今よりハッピーにしてやるのか、を目掛ける学問、なんじゃないかなと考えています。だから私達は(たとえ最終的には図書館の中のヒトになるのだとしても)図書館の事だけを学んでいるわけにはいかない。必要だったのだ。数学も、哲学も、プログラミングも。

そう考えると今の「標準的な」司書科目の内容にも言いたいコトがたくさん出来てくる訳ですがそれはまた別の話。

誰かに話をすることで透かし見えること

後半の方、書けば書くほど説教臭くなってしまって自分の老害感に頭を抱えている訳ですが、最後に少し違う話を書きます。
こういう記事の最後は大体「なんとかのススメ」的に締めるのが良いんでしょ?知ってる知ってる。でもさすがに「みんな司書課程の科目を持とうぜ!」とは書けません。今回自分が(研究職でもないのに)お話を頂いたのだってちょっと二度とは起こらないレベルの幸運な出来事だったと思います。
では何を?強いて言うなら「誰かに一生懸命考えながら話をすること」じゃないかなと。ただの非常勤講師のクセに自意識過剰かもしれませんが、講義を持っていると色々考えます。目の前にいる(司書資格が欲しいと思っている)数十人の若者達に何を話すのか?ひとつのトピックをどう取り上げるのか?それはいま本当にこの講義で時間を割くべきトピックなのか?今回ブログに書いたような事は、そういった事を考えていたら逆説的に自分がklisでどういう教育を受けてきたのか?が何となく透かし見えてきた、という話です。
これって割と普遍的だなぁと何となく思っていて。誰かに話すために、聞かせるために、一生懸命考えていると、そこから一見無関係に見える色んなモノゴトが透かし見えることって割とあるんじゃないかなと。個人的にはグルグルひとりで考え込むのも嫌いじゃないのですが、偶にはそういう機会も必要なんだなぁと思った、という話でした。何のススメにもなってませんでした、ごめんなさい。

おわりに

結局最後まで老害感が抜けない記事に仕上がりました。僕はもうダメだ。
今回、長いこと遠くから見守るだけだったklis ACという企画に記事を書く機会を得られて、大変幸運でした。他のステキな記事に大きく見劣りするものになってしまいましたがここまでお読み頂きありがとうございました。たとえほんの少しでも、お読み頂いた方に資するものがありましたら幸いです。

繰り返しになりますが以上の記事はLaboremus4869の個人的な意見・見解となっており、所属する(していた)いかなる組織とも無関係ですので、どうぞ悪しからずご了承ください。
大人って難しい

ではまた。

*1:ちなみに司書課程科目の教科書は樹村房さんのが個人的には使いやすかったです